紂王が女媧宮に参詣したとき、女媧御前は、たまたま神殿を留守にしていた。火雲宮へ、自分の誕生日の挨拶に出掛けていたのである。

纣王参谒女娲宫之时,女娲娘娘恰好不在神殿。当时,她已出发去了火云宫,正接受众神对自己生日的祝贺。

火雲宮は岱山の真上にあり、そこは天界で、崑崙山脈の仙界とは、自ら別の世界であった。伏羲、神農、軒轅の三聖がいて、下界の政治一般を、遠隔操作している。下界でいう「天命」とは、この火雲宮の命令にほかならない。

火云宫位于泰山的正上方。那里是天界。与昆仑山脉的仙界相比,天界本身就是另一个世界。传说,伏羲、神农、轩辕三圣,一直在远程操纵着下界的政治。事实上,下界所说的“天命”,正是火云宫的命令。

封神演义第七十七回标题(日本安能务版封神演义)(1)

日本版的五皇,吐槽无力

火雲宮の三聖が、いわゆる天帝であるが。伝説によると、昊天上帝は轩辕氏だそうです。天帝と仙人の間には、直接の往来はない。しかし、天界と仙界には、暗黙の不可侵協定があったから、なにかで、相互に意志の疎通を図る必要が、起こることがある。そのときの、いわば連絡将校が、女媧宮の女媧御前であった。だから、彼女は仙界でも、広く顔を知られている。

火云宫三圣,就是所谓的天帝。传说中的昊天上帝就是轩辕氏。天帝和仙人之间并没有直接的往来。天界和仙界立下了秘密的不可侵犯协定。因此,双方有必要就某些大事相互沟通。可以说,女娲宫的女娲娘娘就是在大事发生时负责联络天界和仙界的人。因此,她在仙界也广为人知。

それはともかく、天帝に誕生日の報告と挨拶をすませた女媧は、青鸞(青い霊鳥)に乗って、女媧宫に帰ってきた。いつもは、笑顔で迎える「金童」「玉女」が、なぜか、おろおろしている。理由をきくまでもなく、すぐに女媧は、宮内の壁の落書を見つけた。

总之,女娲向天帝作了日常报告,接受了众神对自己生日的朝贺。没多久,她便乘着青鸾(青色的灵鸟)回到了女娲宫。不知为何,平时对她笑脸相迎的“金童”“玉女”,这回却总是小心翼翼的。女娲还没来得及问他们提心吊胆的理由,就立马发现了宫内墙壁上的落书。

封神演义第七十七回标题(日本安能务版封神演义)(2)

日本游戏《无双大蛇》中的女娲

「紂王か。この思い上がりの色気違いめ!身を修め、徳を積み、天下を治めることを怠りやがって、よくも、悪ふざけをしおった。絶対に、赦すことは出来ない。すぐさま、思い知らさずにすまされようか!」と、いましがた降りた青鸞に、再び乗る。その青鸞が羽搏いて、まさに飛び立たんとしたとき、空中から、声がかかった。

「纣王?!你这个狂妄的色鬼!你怠于修身积德,又怎能治理好天下!亏你竟敢拿我开玩笑!绝对!绝对不能原谅!马上!让我现在就给你一个下马威!”女娲再次乘上刚刚落下的青鸾。可当青鸾展翅欲飞之时,空中又传来了一道声音。

「女媧よ、取り乱しおったな!」

“女娲,你可真是惊慌失措啊!”

「無礼者!」と女媧は、見向きもせずに、どなり返す。声の主を確認する必要はなかった。この広い宇宙の中で、彼女を呼び捨てにする者は、ただ一人、申公豹しかいない。しかし、声をかけられて、女媧は、朝歌に往くことを、思いとどまった。

“无礼!”金童玉女齐声斥责,可女娲却看都不看那人一眼,更没有还嘴的意思。事实上,女娲没有必要去确认声音的主人。毕竟,在这广阔的宇宙中,只有一人敢对她直呼其名。那就是申公豹。然而,女娲被申公豹叫了一声后,就放弃了去朝歌报复纣王的想法。

なるほど、紂王は、それでも天子である。それに彼には、まだ二十八年の天下が殘っていた。悪ふざけをしたからとて、妙な手出しは出来ない。しかし、冷静にはなっても、やはり、怒気は鎮まらなかった。

诚然,纣王毕竟是个天子,再说了,他的天下还有二十八年。因此,就算纣王对女娲开了什么不好的玩笑,女娲也没有什么对付他的好手段。但是,即使冷静下来,女娲的怒气也还是没有平息。

「葫蘆を持って参れ!」と女媧は金童に命ずる。金童は急いで、宝物庫から金色の葫蘆を出してきた。それを女媧は、丹墀(殿堂と庭を昇降する、朱塗りの階)の前の庭に置かせる。まだ怒りに震える手で、蓋をとった。葫蘆の口に、右手の人差指を近づける。

“拿葫芦来!” 女娲命令金童道。金童急忙从宝物库中拿出了金色的葫芦。她把葫芦放在了丹墀(从殿堂来至庭院处必经的涂以朱漆的台阶)前的院子里。还在愤怒中的她,用颤抖的手将葫芦的盖子取下。接着,她再伸出右手食指,靠近了葫芦口。

封神演义第七十七回标题(日本安能务版封神演义)(3)

丹墀

「疾!」と短く鋭い気合いをかけた。

“疾!”一道短暂而尖锐的呼喝声出现了。

椽のような一本の白い煙の木が立ち昇る。五丈ほどの高さに、パッと旙(垂れ幕のような)が、垂れ下がった。地上の妖精と妖孽に、非常召集をかける「招妖旙」である。

一道白烟拔地而起,其大如椽木一般,高五丈有余。忽然,一面(像垂幕一样的旗子)在白烟之上垂下。这就是对地上的妖精和妖孽进行紧急召集的“招妖旙”。

招妖旙があがると同時に、颯々と悲風が起こり、もうもうと惨霧が立ち籠めて、陰雲が四合した。しかし一瞬にして、ぱっと消える。地上の群妖が参集した。

在招妖升起的同时,悲风飒飒,惨雾弥漫,阴云四合。不过,这些天象都在一瞬间消失了。地上的群妖也已聚集在女娲宫前。

女媧は、参集した群妖の中から、千年の女狐と、九首の雉と、石琵琶の三匹だけを殘して、他の妖精、妖孽を退散させる。そして、殘った三匹の妖孽に、厳かに言い渡した。

在聚集的群妖中,女娲留下了千年女狐、九头雉鸡以及玉石琵琶。待其余妖精、妖孽尽数退散后,女娲对剩下的三只妖孽郑重地说道:

「なんじら三妖は、畏みて密命を受けよ。商王朝の命数は、すでに尽きようとしている。鳯が岐山の麓に鳴いた。その麓、西岐(陝西省の渭水と涇水流域)に、新たに天子となるべき人物が誕生している。王朝交替の天意は定まった。されど紂王は、なかなかにしぶとい。よってなんじら三妖は、美女に姿を変え、後宮に潜入して、まずは紂王の心を惑乱せよ。ただし、濫りに殺生を犯すべからず。密命を果たした暁には、なんじらを妖孽から妖怪に昇格せしめる。そのときなんじらは、人間世界に参入を許されるだろう」

“你等三妖,敬畏地接受我的密命吧。商王朝的寿数已经尽了。凤凰在岐山的山麓处鸣叫。在岐山山麓,也就是西岐城(陕西省渭水和泾水流域),一个理应成为新朝天子的婴儿诞生了。王朝交替的天意已然定下。可纣王的气运仍然顽强的很。因此,你等三妖要变成美女,潜入后宫,惑乱纣王的心。不过,你们不能犯下滥杀的恶行。在完成了秘密使命后,我会让你等从妖孽晋升为妖怪。到那时,你们就可以自由地进入人类世界了。”

封神演义第七十七回标题(日本安能务版封神演义)(4)

妖狐

天地の霊気と日月の精気を浴び、魔性を帯びて、妖術を会得した物(動物・植物・鉱物)を妖精という。妖精は妖術を心得ているが、人間の姿を取ることは出来ない。その妖精が「変化」の術を習得して、妖孽となる。妖孽は、人形を取り得るが、長く持続させることは出来ない。その妖孽が、さらに芸を究めて、妖怪となる。妖怪は、常に人形を成し得るから、出自さえ問題にしなければ、仙人と変わるところはない。仙人は、もともと人間である。女媧が三妖に、将来の昇格と、人間世界への参入を許す、と約束したのは、そのような意味にほかならない。つまり、見返りに、妖怪になるための秘法を、伝授しようということである。

沐浴了天地灵气和日月精气,生来带有魔性,掌握了妖术的动物、植物以及矿物,均可被称为妖精。妖精虽然习得妖术,却不能化为人形。若妖精学会了“变化”之术,便成为了妖孽。妖孽可以变成人类的形象,但无法长久持续下去。某些妖孽,更深入地钻研自身的妖术,最终成为了妖怪。妖怪平时能以人类的形象行走世间,因此,要是出身不成问题的话,妖怪和仙人就没什么区别了。毕竟仙人本就是人类。女娲与三妖的约定,无非是这个意思——允许她们将来晋升,自由地进入人类世界。也就是说,作为回报,女娲将会把成为妖怪的秘法传授给三妖。

「ありがたき幸せに存じます」

“我等十分荣幸,必将全力完成娘娘的使命。”

「ただちに出発せよ」と女媧は、せき立てる。そうでなくても、リーダー格の女狐は、好色限りない。一刻も早く、強くて男前の紂王を、見ておきたかった。三妖は、一陣の風と共に、さっと姿を消す。

“马上出发吧。” 女娲着急道。就算没有那样,三妖中的领袖女狐也是无比好色的。事实上,她也想尽早见到强壮又帅气的纣王。很快,一阵风吹过,三妖迅速消失了。

だが、運悪く朝歌の上空に、白い虎がいた。背に申公豹を乗せた白い虎である。この虎は、いわば妖孽の天敵であった。ときに妖孽を捕えて、餌にすることがある。三妖は蒼くなって、女媧宮に逃げ帰った。あの無頼な申公豹が、またも邪魔立てしおったか、と女媧は舌打ちする。たしかに、申公豹は変わり者ではあるが、いわゆる無頼者ではない。

但是,运气不好的三妖在朝歌的上空遇到了一只白虎。申公豹坐在白虎的背上。这只白虎可以说是妖孽的天敌。它有时会捕捉妖孽,将其作为自己的饵食。三妖面色苍白,逃回了女娲宫。那个无赖的申公豹,又来打扰了吗?女娲咂舌道。而且的确,申公豹是个怪人,但他并不是所谓的无赖。

封神演义第七十七回标题(日本安能务版封神演义)(5)

日本漫画版的申公豹造型明显来自西方的“小丑”

それどころか、払塵(払子)を手に、白い虎にまたがって長い髭をなびかせ、着流しの道服姿で天空を徘徊する申公豹は、絵に描いたような仙人である。

不仅如此,手持拂尘(拂子),身骑白虎,胡须飘逸,便装道服,在空中四处徘徊的申公豹,就像是一个从画中直接走出来的仙人。

それより、彼が手にした払塵は、塵や蠅を払い、あるいは恰好をつけるための、ただの払子ではなかった。仙界の大長老、太上老君(老子)が「特別に」授けた、いわくの品である。それに、柄の中に「雷公鞭」が仕込まれていた。その雷公鞭で、随意に稲妻を走らせ、雷を起こすことが出来る。瞬時に、すべて形あるものを焼き尽くし、粉砕し去ることが出来るばかりか、その影や魂をさえ、熔かすことが出来た。

更重要的是,他手中的拂尘,不仅仅是一把在拂去灰尘和苍蝇的同时将自己打扮得光鲜亮丽的拂子。这可不是一般的拂尘,而是仙界的大长老太上老君(老子)赐予他的“特殊”礼物。此外,拂尘的柄中还嵌有一条“雷公鞭”。申公豹可以用那条雷公鞭随意地发出闪电,引动天雷。雷公鞭不但能在刹那间将所有有生命之物烧尽粉碎,甚至还可以熔化它们的影子乃至于魂魄。

その秘宝を、いつどこで申公豹が手にいれたかは、仙界の謎である。いや、その恐るべき「法力」の実体をすら、仙人たちは定かに知らない。手に取って調べようにも、太上老君が特別に授けた払子に仕込まれていたから、それに手を触れることははばかられた。

申公豹究竟在何时何地得到了这件秘宝?这一直是仙界的谜团。不,就连那件拥有可怕“法力”的宝贝是否存在实体,仙人们也是不清楚的。即便申公豹愿意将那把拂子借给那些仙人,让他们拿在手里仔细观察一下,他们也会有所顾忌,不敢触碰。毕竟,这把拂子是太上老君赐予申公豹的特殊礼物啊。

封神演义第七十七回标题(日本安能务版封神演义)(6)

申公豹与雷公鞭

崑崙山には、その鞭を制圧できる武器は、ないのではないかと仙人たちは秘かに懼れをなしている。しかし、申公豹がそれを武器として使ったことは、一度もなかった。いや彼自身、決して武器には使うまい、と自らに誓っている。

事实上,在昆仑山,没有哪件武器能压制住那条鞭子。仙人们暗自忌惮着雷公鞭,可申公豹却从来没有把它当作武器使用过。不,他绝不会将其当作武器使用。这是申公豹自己对自己发下的誓言。

だが、申公豹はその秘宝を、ただ持ち腐らせていたわけではなかった。地震などで巨大な落石があると、その石を粉砕して、道を通し川の流れを整えることがある。だから彼は、下界では人気が高かった。

但是,申公豹并没有将那件秘宝就这样放在一旁吃灰。在地震之后,巨大的落石往往会在人间出现,申公豹会在第一时间将那些巨石粉碎。不仅如此,他还经常帮人们疏通道路,调整河流的走向。因此,申公豹在下界很受欢迎。

しかし崑崙山脈では、さんざんである。正確には、申公豹は単なる道士であって、未だ仙人ではない。資格は十分だが、彼は免許を取らなかった。仙界は、徒弟制度で成り立っている。師父(師匠)から免許を受けて「仙人」になると、洞府(道場)を開き、弟子を取らなければならない。それが、申公豹にはなんともうっとうしかった。だいたいが、徒弟制度そのものを、彼はこころよく思っていない。つまり彼は、たしかに崑崙山の異端者であった。いや、仙界の「ハグレ者」である。

然而,在昆仑山脉上,申公豹却混得一塌糊涂。准确地说,申公豹只是一个道士,还不算是仙人。尽管他的资质很好,却一直没能顺利出师。仙界是建立在学徒制的基础上的。要知道,在得到师父(老师)的许可,成为“仙人”之后,他就必须开洞府(道场),收弟子。这让申公豹很是不爽。总而言之,申公豹觉得学徒制本身并不是一个令人满意的制度。也就是说,他的确成为了昆仑山中的异端。不,是仙界的“无赖”。

しかし、彼の「異端」がまかり通ったのには、ちょっとしたワケがあった。雷公鞭の威力もあったかも知れない。が、それも含めてひと言に尽くせば、それは、太上老君の庇護の賜物であった。ただ、彼は下界で帝位を拒否した、という輝かしい経歴の持ち主である。だから、その生来の異端に免じて、仙界が目を暝った形になっていた。

不过,他这样的“异端”之所以能在仙界横行无阻,倒还是有点儿原因的。或许那些仙人们也知道雷公鞭的威力。但总的来说,这是太上老君庇护的结果。不为人知的是,申公豹有过一段在下界拒绝帝位的光辉经历。有一位仙界中人将他那与生俱来的异端看在眼里,并在关键时刻助了他一臂之力。

彼はその昔、五帝の一人「帝堯」の時代に、下界に隠れていた「隠士」である。世間の名利を嫌った賢者でその名を許由と呼ばれた。仙界における彼の苗字「申」は、許由の「由」のタテ棒を下に伸ばしたものである。そして彼は「申公」と呼ばれた。「豹」がついたのは、彼が白い虎を乗騎にした後のことである。

在很久以前,约莫是五帝之一的“帝尧”时代,申公豹就已经是在下界隐居的“隐士”了。当时,他是一个讨厌世间名利,被时人以“许由”相称的贤者。在仙界,他的姓氏“申”是由许由的“由”的那一竖向下延伸而来的。后来,他被众仙称为“申公”。至于那个“豹”字,则是在他得到坐骑白虎之后出现的一则笑谈了。

封神演义第七十七回标题(日本安能务版封神演义)(7)

许由与巢父

ある日、帝堯が突然に、許由の庵を訪れて、いきなり、帝位を彼に譲ると申し出た。それを耳にした許由は、穢れた耳を洗うために、姫水に走り、川の水をじゃぶじゃぶと耳にかける。そこへたまたま、水を飲ませようと、一人の農夫が牛を連れてきた。農夫は、許由にわけを訊く。

有一天,帝尧突然来到许由的庵中拜访,并突然提出要将帝位让给他。听到这些世俗浊言的许由,为了清洗污秽不堪的耳朵,急忙跑到姬水旁边,并将河水哗啦哗啦地浇在耳朵上。这时,一个农夫牵着一头牛过来,想让它饱饮一顿。在交谈中,农夫问出了许由洗耳朵的原因。

穢れた耳を洗った穢れた水を牛に飲ませるわけにはいかない、と農夫は牛を川上に連れて行った。偉い農夫だ、と許由は感動して後を追い、いつしか上流にあった軒轅廟の前に出る。

“不能让牛喝下洗了脏耳朵的污水!”农夫说完,便将牛牵到河里去了。真是个了不起的农夫啊!许由被农夫的言行感动,主动追随在他的后面。不知何时,他来到了上流的轩辕庙之前。

その庭で、大きな白い虎が、寝そべっていた。考えに耽っていた許由は、それを白い巨石と間違えて、腰を下ろす。虎が動いて、許由は気絶した。その顔を、虎がやさしく舐める。

一只巨大的白虎在庙中的庭院里躺着。陷入沉思的许由,将白虎误认为白色的巨石,直接坐了下来。白虎动了一下,将许由直接吓昏了过去。然而,白虎却没有吃掉许由,而是温柔地舔舐着他的脸。

その光景を、雲の上から眺めていた仙人がいた。崑崙山脈は終南山、玉柱洞の雲中子である。面白い人間と虎がいたものだ、と雲中子は、許由と虎を雲に乗せた。そして崑崙山へ連れて行く。しかし、動物を勝手に、仙界に連れこむことは出来ない。そこで、白い虎は崑崙山脈の玄関口、棋盤山に、ひとまず降ろされた。申公豹は、大本山の玉虚宮に連れて行かれる。

有一位仙人在云上远望,看到了这一幕。他就是在属于昆仑山脉的终南山玉柱洞开辟了洞府的云中子。真是有趣的人和老虎啊!云中子一边说,一边将许由和老虎放在祥云之上。然后,他带着一人一虎往昆仑山行去。不过,动物是不能被擅自带进仙界的。于是,白虎被云中子暂时放在了昆仑山脉的玄关口——棋盘山处。申公豹则被直接带到了大本营玉虚宫。

玉虚宮の元始天尊は、許由の処遇を、太上老君に相談した。帝位を拒否したものは、帝王よりも魂の位が高い。だから、さすがの元始天尊も、独りで決めかねたのである。許由と聞いて、太上老君はわざわざ玉虚宮に顔を見せた。

玉虚宫的元始天尊找太上老君商量许由的待遇。要知道,拒绝帝位的人,其魂位必然高于帝王。因此,就连元始天尊也难以独自决定许由的去留。听说许由来到了昆仑山,太上老君特意在玉虚宫露面了。

「なぜ帝位を拒否したのじゃ?」と太上老君がたずねる。

“为什么要拒绝帝位?”太上老君如此问道。

「われ、あえて天下の先に立たず」と許由は答えた。太上老君は、滅多に見せない笑顔を露わす。許由が口にした言葉は、老子(太上老君)が、かねがね人間の三大徳目の一つに挙げていた言葉であった。その一言によって、太上老君は、許由の特別庇護者となる。

“我不敢为天下先。” 许由回答道。太上老君露出了难得的笑容。许由口中所说的这句话,很早就被老子(太上老君)列为人类三大美德之一。由于这一句回答,太上老君成为了许由的特别庇护者。

「相応の礼遇が必要であろう」と太上老君は意見した。元始天尊は、その意見を尊重して、許由を直弟子に取り立てる。玉虚宮に留めて南極仙翁に預けた。南極仙翁は、大本山の主席仙人である。

“应该给他相应的礼遇。”太上老君提出了意见。元始天尊尊重他的意见,将许由收为弟子。许由就此留在玉虚宫,并被托付给南极仙翁教导。南极仙翁是大本营的首席仙人。

白い虎が降ろされた棋盤山には、軒轅廟があった。方々にある軒轅廟の一つである。しかし、ここは仙界に近くて、仙人に対する気兼ねがあったから、軒轅氏は、ほとんど寄りつかなかった。したがって留守居役の千里眼と、順風耳が主のようなものである。千里眼と順風耳は、軒轅氏が下界に君臨していたときの諜報員で、いわゆる聖者ではない。

在白虎降落的棋盘山上,有一座轩辕庙。那是各地轩辕庙的其中一处。可是,这里离仙界很近。由于对仙人有所顾忌,轩辕氏几乎没有靠近过棋盘山。因此,在此地留守居役的千里眼和顺风耳就像是这座庙宇的主人一样。千里眼和顺风耳是轩辕氏君临下界之时的情报员,而不是所谓的圣者。

したがって白い虎は、正統的な道術や仙術を教わる機会に恵まれず、もっぱら、諜報の技法と技術を教えこまれた。そして、千里の彼方を見通し、千里も離れた音声を聞き分ける技能を身につけている。もとより初步的な、雲の乗り方は習得した。人語を解し、喋ることも出来る。

因此,白虎没有机会学到正统的道术和仙术,不过,千里眼和顺风耳却将情报员所需掌握的法术专门教给了它。后来,白虎练就了在千里之外见人听声的本领。当然,它还初步学会了驾云的方法,更能听懂并说出人类的语言。

いつしか千年の歳月が流れた。その棋盤山へある日、申公豹が道服の着流し姿で、ふらり現われる。

不知不觉中,千年的岁月过去了。有一天,申公豹便装道服,在棋盘山上出现了。

「あまり楽しそうな顔してないね」

“好不容易见到我,怎么你却一脸不高兴啊?”

申公豹は白い虎のオデコを撫でた。

申公豹抚摸着白虎的额头。

「なんだ、脳天に黒斑があるじゃないか。昔からあったのかな?」

“什么嘛?!你的脑门上不就是长了块黑斑吗?莫非很久以前就有了吗?”

「鏡を見ないから知りませんよ。そうか、解った。それで千里眼さんや順風耳さんがボクのことを黒点虎だとか、クロと呼ぶんだな。白い毛皮を着ているのにさ」

“我不知道,毕竟我没照过镜子。好吧,我明白了。千里眼和顺风耳因此都叫我黑点虎或者小黑。可我的皮毛明明是白色的啊?”

「そうか。ところでクロ、散歩に出ようか」

“是吗?对了,小黑,我们出去散步吧!”

「どこへ?」

“去哪里?”

「里帰りだ。下界の、ほら、あの姫水の辺りの軒轅廟だよ。こんどはおれが雲に乗せてやる」

“回我们的故乡。下界的,看,就是那座在姬水附近的轩辕庙。这回让我来带你腾云驾雾吧。”

「その必要はないですよ。ボクの背中にお乗りなさい」

“没那个必要。你只要坐在我的背上就行了。”

「へえ!雲より早いのか?」

“啊?!比腾云驾雾还要快吗?”

「同じくらいかな」

“差不多一样快吧。”

「よし、出掛けるとしよう」と申公豹は黒点虎にまたがる。

“好,我们出发吧。”申公豹跨上了黑点虎的背。

「急ぐ旅じゃなし。高度を下げて、下界を見物しながらゆっくり行こうよ」

“这次旅行又不急。可以慢慢走。来,把高度降低,我们去看看下界的情况吧。”

「だめです。速度を落とすと墜落するから。それに地上から矢でも射かけられちゃ、かなわないですよ」

“不行。要是速度降低的话,我会坠落的。再说了,我的速度也比不了从地上射过来的箭啊。”

「墜落したんじゃ困るが、矢が飛んできたらおれが払いのけるから大丈夫だ」

“你只要别不小心坠落,我们就不会有麻烦。要是有暗箭飞过来的话,我可以把它推开。因此我们没什么好担心的。”

「ほんとうに大丈夫ですか?」

“真的没问题吗?”

「バカにするんじゃない。そこらの仙人に出来ないことまでおれには出来るんだぞ」

“别把我当傻瓜!就算是那些仙人都做不到的事情,我也能做到啊!”

「へえ!一生懸命に勉強されたんですね。その仙人にも出来ないことって例えば?」

“啊!看来,你努力学习了不少仙术哦!比如说‘那些仙人也做不到的事情?’”

「例えばいま、ここでおれが自分の首を刎ねる。その首が目的地に飛んで行って、おれたちの到着を待つ。やってみようか」

“比如说,我现在在这里把自己的头给砍下来。那颗头会直接飞到目的地,等待着我们的到来。来,我们开始吧。”

「いや、危ないからやめましょうよ」

不,很危险,还是算了吧。”

「おれの秘芸だ。面白いから一度だけ見せる」と申公豹は、左手で頭の髪をつかむと、右手の手刀で、スパッと首を切った。それを抛り上げると、首は目標に向かって一直線に飛び去る。黒点虎は速度をあげたが追いつかない。しかし軒轅廟に到着すると、首は庭の上で待っていた。そして、スーと降りてきて元の位置に収まる。

“这是我的绝技。我只给你看一次,就当是玩玩而已。”申公豹用左手抓住头发,右手使出一记手刀,唰地一声将头砍了下来。他将那颗头扔了出去,头向着目标地点直线飞去。黑点虎加快了速度,却还是追不上那颗头。不过,当黑点虎赶到轩辕庙之时,那颗头已经在院子里等待着他们的到来。随后,嗖的一声,那颗头回到了它原来的位置。

昔懐しい廟の庭で、黒点虎は昔のように寝そべった。その身体の上に申公豹が、こんどは堂々と腰を下ろす。二人は見事に、千年のタイ厶・トンネルを抜けてきた。

在轩辕庙的庭院里,黑点虎像以前那样慵懒地躺着。这次,申公豹可在黑点虎的身体上稳稳当当地坐下了。眼前的一切令人无比怀念,一人一兽沉浸在回忆中,好像穿越了千年的时光隧道,回到了他俩初见的那一刻。

「クロ!あのときおれが気絶したことで、お前にとんだ迷惑をかけたのではないか、と考えたりするのだが、正直な話、棋盤山での暮しは、どうなんだ?」

“小黑!在昆仑山修行时,我经常会想,要不是那时我昏倒了,又怎会给你添了那么大的麻烦呢?说实话,你在棋盘山生活得怎么样?

「别に、よくもなし、悪くもなし」

“没关系。我在棋盘山上过得不好也不坏吧。”

「それならよいが、おれは実のところ、仙人になるのはイヤなんだ」

“那我就放心了。你知道吗,其实我不想成为仙人。”

「どうして?」

“为什么?”

「掟があるのも気にくわんし、それに、終りの時間のないのは退屈で、それに恐ろしいんだ」

我不喜欢仙界的规矩,况且,仙人修行的时间无穷无尽。这样的生活既枯燥又无聊,还很可怕。”

「へえ?」

“啊?”

「へえ、じゃない。お前も千里眼や順風耳の術をやめて、精神を集中し、天精地霊の気を吸収すれば、あと五百年で“変化”を習得して妖孽に仲間入り出来る。さらに五百年すると、妖怪の域 に達し、常時人間の姿をして仙人ヅラが出来るんだ。そうなりたいか、なりたくないか、それが問題だ。悪いことは言わない。いまのうちに腹を決めておけよ」

“难道我说得不对吗?要不你也放弃千里眼和顺风耳之术,集中精神去吸收天精地灵之气吧?如此一来,只要再过五百年,你就能学会“变化”之术,加入到妖孽的队伍中去。之后,你继续修行五百年,就会达到妖怪的境界。成为了妖怪后,你就能经常以仙人的样子混迹在人间啦。不过,变还是不变,这是一个问题。算了,我不说什么不好的话了。你还是趁早做个决定吧。”

「ボクが仙人に?」

“我以后也能变成仙人?”

「ただし、そうなっても崑崙山では差別待遇があるから、やはり妖怪扱いは免れまい。だが、河岸を換えて金鰲島にでも行けば、立派に仙人で通るよ」

“没错!可昆仑山是有歧视待遇的。就算你能成功化为人形,也免不了被那些仙人当做妖怪来看待。不过,如果你换个地方,去金鳌岛修行的话,就一定能成为一名优秀的仙人!”

「妖孽や妖怪、いや仙人になるよりボクは虎のままがいいや」

“妖孽……妖怪,不,比起成为一名仙人,我还是做一只老虎比较好。”

「その通りだ!そういう考え方がある。だから早めに肚をくくれ、と言ったのだ」

“没错!就是那样!我说嘛,你要早点摆正自己的心态啊!这不?你能有这种想法,实在是令我欣慰无比啊!”

「でも、ならなくてもすむんですか?」

“但是,一定要这样吗?”

「毎日、ヒマになったら、口をポカンと開けとりゃいいんだ。そうすれば、身体が吸収した精気や霊気が抜けるから。ただし低速で天空を翔けると墜落する、というのは困るね」

“对啊!你每天一有机会,就把嘴张开。这样的话,你的身体吸收的精气和灵气就会逐渐消失。但如此一来,你要是在天空中低速飞行,就会坠落。这可是个麻烦的问题。”

「どうも不器用で、自分でもいやになる」

“我总觉得自己笨手笨脚,笨到连自己都讨厌。”

「よし、おれが、天空に静止できる方法を教えてやろう。それに、いきなり飛んできた凶器を払い落とす術ぐらいは習得したがよい。それも教える。だが、それ以上は、何も学ぶな」

“好吧,我先来教你一个能在天空中静止的方法。况且,你至少还应该学会如何摆脱一个突然向你飞来的武器。这个方法,我也会教你的。但是,除此之外,不要再学其他东西了。”

「どうして?」

“为什么?”

「適当に危険な状況で活きていたほうが楽しいからだ」

“在适当危险的情况下,你才能活得更有乐趣啊。”

「そんなもんですかねえ」

“想不到是这样啊。”

「そうだ!楽しいことを一つ教えよう」と申公豹はポンと軽く黒点虎の頭を叩いた。

“对了!教你一件有意思的事情!”砰地一声,申公豹轻轻地敲了下黑点虎的头。

「お前は虎だから、木の実や霞ばかり食べていたんじゃ、ちっともウマくあるまい。さればとて、いまさら血腥い野生の動物というわけにもいかないが、鳥獣の妖精や妖孽なら、いけるぞ。悪い奴だけを狙えば、その仲間からは仇にされるが、誰の咎めも受けるわけではない。どうせ、一年に二匹や三匹ですむことだ。捕え方はおれが教える」

“你是一只老虎。可不能只吃树上的果实,喝云霞里的露水啊。这对你的身体一点都不好。话虽如此,事到如今,你早已不是一只贪食血腥的野生动物了。但万一我要你去捕食一些鸟兽所化的妖精或妖孽的话,应该没有问题吧?你可以只针对那些坏家伙。尽管你这样做,会被他们的伙伴视作仇敌,但你也不会被任何人指责。反正你一年抓两到三只妖孽就行了。现在,就让我来教你捕猎的方法吧。”

「お願いします」と黒点虎は舌なめずりした。

“多谢,拜托了。”黑点虎舔了舔自己的舌头。

あれから、さらに百年がすぎる。すでに黒点虎は、妖孽の捕え方を身につけた。天空に静止することも出来る。不意に襲われたときの身のかわし方も、凶器を払いのけることも、すべて習得した。

在那之后,又过了一百年。黑点虎已经掌握了捕捉妖孽的方法。在天空中静止的方法也被它学会了。如今的它,就算受到了意外袭击,也能及时躲避并抵挡武器的攻击。

仙界では、白い虎が何を覚えたかは話題にならない。しかし妖孽たちの間では、たちまちにその噂が拡まった。女媧の密命を受けた三妖が、彼の姿を認めて、真っ蒼になって逃げたのはその証拠である。しかし、彼は申公豹の言葉に従って、それ以上は何も学ばなかった。だが、棋盤山で、ただ口を開けているのも能がない。それで申公豹を背に乗せては朝歌の上空を徘徊するようになった。それが結果的に、三妖が紂王に接触することを妨げる。彼自身はそれを知らない。

在仙界,白虎到底学会了什么,并不是一个值得谈论的话题。但是,有关白虎的传言,很快就在妖孽中传开了。得到女娲密命的三妖,确认了它的身影后,脸色苍白地逃走了。这就是白虎是妖孽天敌的证据。然而,它听从了申公豹的话,再也没有学过任何东西。不过,即便如此,它也不可能在棋盘山上随便张开它的大嘴。因此,黑点虎时常背着申公豹在朝歌上空徘徊。这样一来,三妖和纣王的接触被阻止了。当然,申公豹和黑点虎是不知道这件事的。

女媧宮から帰ってきた紂王は機嫌が悪かった。いかにも苦々しげな表情である。女媧像の美しさに心打たれて、神気が定まらないのだ。眼は虚である。

纣王从女娲宫回来后,心情很不好。他脸上的表情很痛苦。实际上,他被女娲像的美丽所震撼,心神难以安定下来。如今,他的眼神是虚无空洞的。

彼は宮殿には昇らず、したがって、無事にご参詣をすませたという、朝臣の慶びの挨拶も受けずに、そのまま真つ直ぐに後宮に入った。ルール違反でもあり、前代未聞の出来事である。

虽说纣王算是顺利完成了参谒女娲的工作,但他并没有上殿接受朝臣们的问候和祝贺,而是就这样径直入了后宫。实际上,这也是一件违反规矩,前所未闻的大事。

いきなり後宮に入ってきたから、なにか異変でもあったのかと、后妃、嬪御、美人(宮女の呼称)たちは、慌てふためいて、迎えに出た。紂王はニコリともしない。

纣王突然进入后宫,使得后妃、嫔御、美人(宫女的称呼)们都慌慌张张地出来迎接。她们都害怕纣王出了什么事,可纣王却对她们不屑一顾。

「どいつも、こいつも石コロだ。大根、牛蒡にも劣る」

“为什么这家伙总是硬如石块?哼!这条大根,连牛蒡都不如!”

口には出さなかったが、紂王は腹立たしくなる。御輦(天子の車)から降りると、紂王は内殿には足を向けず、逆に外殿(政庁)に向かって、とぼとぼと歩き出した。まもなく内殿と外殿を隔てる分宮楼の下に出る。そこで紂王は足を停めて、大きく溜息をついた。

尽管纣王没有说出口,但他确实很生气。从御辇(天子之车)下来之后,纣王并没有向内殿走去,反而朝着外殿(政厅)蹒跚而行。不久后,他来到了隔开内殿和外殿的分宫楼下方。于是,纣王停下脚步,深深地叹了一口气。

そして、分宮楼の下を潜り抜けて、喜善殿の前に出る。さらに歩を進めて、顕慶殿にさしかかった。路上に平伏したものがいる。

之后,纣王穿过了分宫楼,来到喜善殿之前。他没有停留,继续前进,往显庆殿走去。半路上,纣王发现有人正在向他大礼跪拜。

諫大夫の費仲と尤渾であった。一瞬、紂王の瞼から「芍薬の霧こめる」女媧像が消える。しかし、二人は、お気に入りの倖臣であった。紂王は安心して、さらに大きな溜息をつく。胸の痛みを打ち明ける気になった。

那是谏大夫费仲和尤浑。一瞬间,纣王眼前那如“芍药笼烟”般的女娲像消失不见了。不过纣王却没有生气,只因这两人是他喜爱的幸臣。安心下来的纣王,更是大大地松了一口气。此时此刻,他只想将心中的痛苦向二人倾诉出来。

諫大夫は、王の側近に侍って、王の言動に非があれば、すかさず諫言するのが務めである。しかし、費仲と尤渾の両人は、ひたすら機嫌を取るだけで、諫言したことは一度もない。朝臣たちの目には、鼻もちならぬ佞臣である。

谏大夫是在王的身边侍奉的近臣。如果王的言行有错,谏大夫就应立即提出谏言。这是他们的职责。然而,费仲和尤浑这两人只是一味地取悦纣王,且从未向纣王提出过谏言。在朝臣们的眼里,两人都是臭名昭著的佞臣。

だから二人は、殊に太師聞仲からは、毛虫のように嫌われた。殿中で顔を張りとばされたこともある。紂王の面前で、ドヤされたこともあった。足蹴にされたことすらある。いずれにしても、聞仲が相手では、紂王も二人を庇いきれない。それゆえ二人は、聞仲を見ると、こそこそ逃げ出した。しかし幸いに、このとき、聞仲は北海に遠征して宫廷にいない。

因此,太师闻仲特别嫌弃这两人。他认为这两人就像毛虫一样令人憎恶。一开始,费仲和尤浑只是在殿里被闻仲嘲笑。可伴随着纣王对两人的宠幸,闻仲愈加嫌弃这两人。他开始在纣王面前公然扇他俩的脸,甚至对他俩拳打脚踢。不管怎样,有闻仲作为对手,就算是纣王也保护不了两人。因此,到后来,两人每次见到闻仲,总会偷偷摸摸地逃走。不过幸运的是,此时闻仲正在北海远征,而没有出现在宫廷里。

紂王は二人の諫大夫を伴なって顕慶殿に昇った。顕慶殿は、重臣や旗頭の大諸侯に宴席を賜わるところである。だから、ここには常勤の朝臣はいない。紂王は二人を側近く呼び寄せると、胸の内を明かした。費仲がこともなげに、媚び笑いを湛えて言上する。

两位谏大夫陪着纣王上了显庆殿。显庆殿是纣王给那些重臣以及几位旗头大诸侯赐宴的地方。因此,这里没有专门值勤的朝臣。纣王将两人召唤到身边,向他俩吐露了自己的心事。费仲若无其事,满脸谄笑着说道:

「陛下のご憂欝を解消するのは、わけのないことでございます。陛下は万乗の貴きにあらせられ、四海の富を有し、聖徳は堯帝に優るとも劣りません。天下の物はすべて陛下のものでございます。お望みがかなえられず、欲しいものが手に入らぬ道理はございません」

“臣没有理由要为陛下消除这份忧郁。陛下是万乘之尊,富有四海,圣德与尧帝不相上下。天下之物,皆陛下之所有。您的愿望没有实现不了的理由,而您想要的东西,也没有得不到的道理。”

「わかった、その先を続けろ!」

“朕知道了!你先继续说!”

「さっそく四路の大諸侯に勅をお出し下さい。それぞれに美女百名を、撰りすぐらせて献上させるのです。四百人の厳選された美女の中に、女媧さまに匹敵する美人が、いない筈がござりましょうか」

“请陛下马上向四路大诸侯下敕。命令四人各自选出美女百名,献与陛下,以充王庭。在四百位经过严格挑选的美女中,难道就没有一位能和女娲匹敌的美人吗?”

紂王は黙ってうなずいた。顔が晴れる。

纣王默然点头。他的脸色终于变好了。

翌日、朝廷が開かれると、さっそく、その旨の勅諚が下された。老宰相商容が、大きく息を吸って天を仰ぎ、玉座の前にひざまずく。

次日,待朝会一开,纣王就立刻下达了这样的诏书。老宰相商容仰天深吸了一口气,直接跪在了玉座之前。

「老臣、あえて陛下に申し上げます。古来、君主には君王の道があって、やたらに天下を騒がせてはなりません。詔なくして民は従い、令少なくして民は楽業する、といいます。陛下には后妃、嬪御の外に、後宮の美女は千人をくだりません。ここで、耳をつんざくような選美の勅を出されたら、万民の尊崇と信を失うことになります。民の楽しむところを楽しみ、民と憂いを共にすることこそ王道であることを、お忘れになられたのでございましょうか。景星(めでたい星)が天に輝き、甘露が地に降り、野に芝草(さいわいたけ)が生え、庭に鳳凰が来たり遊ぶ。路行く人は互いに道を譲り、犬もやたらに吠えず、昼は晴れて、夜に雨が降る。稲は双穂をつけて稔り、民は豊かに、倉には物の溢れるを、悦ぶことこそ王者冥利というものでございます。

“陛下!老臣今日定要启奏!自古以来,君主有君王之道,不可随意扰乱天下。俗话说,无诏民服,令少民乐。况陛下除后妃、嫔御外,后宫美女尚不下千人。若今日您发出令人沸反盈天的选美诏书,您将就此失去万民的尊崇和信任。乐民之乐者,民亦乐其乐;忧民之忧者,民亦忧其忧。这才是王道啊!难道您已经忘记了吗?景星(吉祥之星)耀天,甘露降地,芝草(幸运之草)生于野,凤凰游于庭。行人让路,狗无吠声,昼晴夜雨。稻生双穗,民丰物阜。让万民喜悦,王者才能获得冥利(幸福感)啊。”

邪説に眩惑され、淫声に耳を傾け、酒色に迷うことを、王者は避けなければなりません。側近に賢を薦めて、不肖をお退け下さい。選美の勅はご撤回なさいますよう、この老骨、あえてご諫言申し上げます」

“身为王者,必须避免眩惑于邪说,耳倾于淫声,沉湎于酒色。愿陛下亲信贤明,避退不肖,撤回选美的诏书。要知道,老臣已是把老骨头,不然的话,又怎敢向您如此谏言啊!”

「よくぞ諫めてくれた。勅は撤回する」と紂王はおだやかに席を立つ。やはり名君である。魔がさしただけのこと、と商容は安堵の胸をなで下ろす。鎮国武成王黄飛虎が、退朝する群臣の中から費仲と尤渾を呼び止める。

“很高兴爱卿能提出谏言。既如此,朕就撤回这道敕旨。”纣王安然离席。果然是名君。这个孩子,只是被心魔稍微打扰了一下啊!商容拍着胸口松了口气。镇国武成王黄飞虎从退朝的群臣中叫住了费仲和尤浑。

「こんご陛下に妙なチエをつけたら、ぶった切るぞ!」と佩刀をガチャッとゆすった。

“如果你们给陛下出些奇怪的主意的话,我就会把你们给一刀两断!”喀嚓一声,黄飞虎摇了下腰间的佩刀。

「忘れるなよ」と商容がかたわらでダメを押す。二人は一瞬、首筋が凍ったが、それでもふてぶてしく歩み去る。

“别忘了。”商容在一旁提醒道。一瞬间,两人的脖子僵住了。尽管如此,他俩还是满不在乎地走了。

その年——紂王七年は、どうにか無事にすぎた。

那一年——纣王七年总算平安无事地过去了。


日本安能务版封神演义 第一回 纣王女娲宫进香


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忍不住啰嗦两句,在我小时候可能是受日本漫画或者动画影响,很想看日本的小说。然而让我大失所望。无论是探案系的还是动漫系的,真的看着很不舒服,写得又长又软又啰嗦。这部《封神演义》也不例外。大部份的段落用来写黑点虎与申公豹的千年友谊,然则日本人为什么要这么写呢?只能解释成,他们喜欢看。

已经不能说是原著了,只能说是原创。加入这些比如申公豹的来历,还有把火云洞三圣说成昊天,都与原著是不一样的。做为个中国人,我只能说“胡说八道”。但是对于外国人呢?应该说,让《封神》的故事更完整了。我们都知道,原著中对申公豹的来历是描写不足的,对火云洞三圣的定位也有问题。如果是一个对《封神》完全没有接触过的人来看这部作品。我想,他应该是更能接受安能务彼的吧。

也许我们中国人熟悉的国外神话,也是这么来的。

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